中堅企業のためのグローバル化最適解を考察するブログ

中堅日本企業のグローバル展開をどう進めるのがベストか? 海外勤務22年のノマドビジネスパーソンが、同じ立場で悪戦苦闘されている方々の参考にしていただけそうな経験に基づく情報を発信してまいります。

出島人材の育成3:必要なハードスキルとその習得方法5

(前回から続く)
 
 コミュニティーカレッジでは得意科目で成績も良かったこともあり、アカウンティングの先生と親しくなった。 この先生は以前大手企業の財務部に勤務されていたが、独立して自分の会計事務所を経営されており、夜はこの学校で教鞭をとられている方だった(MBAとCPAを保有)。 ある日この先生が、「あたなはこれから経営者をめざしていくのだから、次はMBA取ったら? もうこの学校で学べることはほとんど学んでしまったでしょう。 パートタイムコースなら仕事をしながら学位取ることもできるし、次に転職するとき有利になるよ。 紹介状書いてあげるよ。」と言ってくださった。 以前からMBAへの憧れもあったし、確かにこの時点ではコミュニティーカレッジの経営に役立てられそうな科目は大方取ってしまっていたので、ちょうど良い機会と思い挑戦することにした。 


 学校は当時の勤務先、自宅から近くかつ学費が相対的に一番安い(と言っても、日本の学費と比べると十分高い!!)という基準で選んで、Rutgers University Graduate School of Management(ニュージャージー州立大学のMBAコース)に決定。 書類準備や試験(TOEFL, GMAT)対策に半年くらいかけ、先生にも紹介状書いてもらい出願。 無事2001年秋学期に入学した。 以前当ブログの記事にも書いたが、出願までの準備は結構大変である。 将来アメリカの大学でMBAを取ろうと考えている人は、すぐにでもGMAT、TOEFL対策を始めることをおすすめする(日本人の場合、ここが最大のボトルネックになるのではないかと思う)。


 さて、実際に授業を受けてみると、最初は周りの生徒全てが優秀に見えて気後れした。 また、多くの科目で授業中の発言とディスカッションを重視し、このディスカッションが早いテンポで進んでしまう点には苦労した。 しかし、慣れてくると意外と大した内容のことは発言していない人が多く、とにかく先に発言したものが勝ちということがだんだんわかってきた。 講義のレベルもコミュニティカレッジよりは高いが、それほど大差があるようにも思えなかった。(ただ、これは私の入学した大学が、いわゆる一流校ではなかったからかもしれない。) また、コミュニティカレッジで学んできたおかげで、アメリカの教育システムに慣れていたのも良かったのだとおもう。 数ヶ月でなんとかペースをつかむことができ、仕事との両立もできる手応えを得られた。 


 結局パートタイムMBAへは1年通って、卒業に必要な単位の約1/3を取得した時点で、残念ながら西海岸への転勤によってドロップアウトしてしまった。 しかし、コミュニティカレッジでの学びも含めこの3年間で、実際の経営に応用できる実践的なスキルや、顧客と折衝できるレベルの英語コミュニケーション能力が身についたと思う。 仕事の方は、上司の帰国により私が現地責任者となり学んだタイミングも良かった。 


 その後も学びを続けていったのであるが、それはまた別の機会で記事に書くこととし、次回からまた本題に戻りたい。 私の体験談に長々とお付き合い頂いた読者の皆様にはお礼申し上げたい。

出島人材の育成3:必要なハードスキルとその習得方法4

第三期:日系メーカーの米国現地法人で、営業マネージャーから現地責任者となるまで


 29歳で最初の転職。 転職先は勤務していた商社の取引先でもある日系の中堅メーカーで、当時売上の7割が海外向け輸出であるユニークな会社。 30歳で念願の米国に営業マネージャー(といっても、社長を含め社員4名の小さな世帯であったが)として赴任した。 顧客は100%米国ローカル企業。 商社時代に海外のサプライアーとの折衝はかなり経験していたが、対サプライアーと対顧客での交渉はかなり勝手が違うことに戸惑う。 サプライアーとはほぼ対等な立場で交渉ができるが、対顧客となると基本的には相手のほうが立場が上であり、ときには理不尽と思える要求や依頼を上手くさばきながら、同時に顧客との人間関係を深めていく必要がある。 サプライアーはこちらの英語力に配慮して、日本人である私にもわかりやすい英語を話してくれるケースが多かったが、お客さんは一般的にはそこまで気を使ってくれない(そうでない方もたくさんおられたが)。 対顧客のほうが格段に高いコミュニケーション能力が必要となることを実感した。 思うように行かず自己嫌悪に陥ることもよくあり、TOEIC等の検定試験で高得点をとってもそれだけでは全然ダメということを身にしみて感じた。 


 また、米国法人は小さいながら独立事業体である。 当然、営業・マーケティング以外に経理や人事・労務管理、法務といった、経営の要素となる色々な仕事を英語環境でやる必要性も出てくる。 徐々に経営全般に関して体系的かつ効率的に学びたいという気持ちが強くなっていき、地元のコミュニティーカレッジで受講できるパートタイムの経営学コースに通うことにした。 


 必要な書類を準備して出願、入学試験(英語と数学、それほど難しくはない。)もパスして無事入学。 授業の時間と自分のスケジュールをすり合わせて、コースはほぼ自由に選べる(但し、Pre-requisitといって、ある単位を取ってからでないと履修できない上級科目はある)。 私は、平日週2日仕事が終わってから3時間程度、土曜日午前中に授業を受けることにした。 同じクラスで日本人は殆ど見かけなかった。 ビジネスコミュニケーションやイングリッシュコンポジション(日本の英作文とは全く異なるカリキュラム)、アカウンティング、ファイナンス、HRM、マーケティング、ビジネスローといった単位を2年間かけて取得していった。 経営で必要な活きた語彙や表現が学べるだけでなく、仕事にすぐ活用できる内容も多く非常に有意義な経験だった。 学ぶことの楽しさもはじめて実感できた。 更に、自分の頭の中で「英語を学ぶ」から「英語で学ぶ」というようなパラダイムの変化が自然に起こっていったという意味で、今振り返ってみてもコミュニティーカレッジでの学びは自分にとって貴重な財産である。

出島人材の育成3:必要なハードスキルとその習得方法3

 もともと英語が苦手であったこともあり、第二期まではどうしても英語の学習ばかりに集中し過ぎていたように思う。 新卒で入った専門商社では、英語力向上に加え、簿記、審査・法務、貿易実務等、実務上必要となるスキルを身につけるための社内コースを受け、試験をパスすることが必須であり、業務を進めていく上での基本的な能力を付けるという意味では意義があった。 外国語でのコミュニケーション能力を向上させることはもちろん必須であるが、今思うともっと早く、例えば仕事に慣れてきた社会人3-4年目から、将来経営者となるために必要な能力をつけるための学習を始めておくべきであった。 


 当時、輸入品を扱っていたこともあり、欧米海外化学メーカーのアジアパシフィック地域マーケティング責任者レベルの外国人の方との交流もあり、そういう方は欧米でMBAを取得されているケースが多かった。 私もなんとなくそういうキャリアに憧れを感じてはいたものの、日常業務の忙しさにかまけて行動を起こさなかった点は後悔の一つである。 多忙な業務の合間に米国のMBAの受験準備をする場合、現実的にはなんだかんだいって1年は最低必要である。 特にTOEIC、GMAT対策が最も時間かかるし、エッセイを準備したり、推薦状を書いてもらうのにも時間が結構かかる。 これを読まれている若手の皆さんには、MBAへの挑戦を少しでも意識したら即行動を起こして受験対策を始めることを強く薦める。


 さて、私の場合本格的に経営者となるための学習を意識して始めたのは、ある日系メーカーに転職して日本での一年間の勤務を経て、マネージャーとして米国に赴任してからである。 これを第三期として、次回以降に述べる。