中堅企業のためのグローバル化最適解を考察するブログ

中堅日本企業のグローバル展開をどう進めるのがベストか? 海外勤務22年のノマドビジネスパーソンが、同じ立場で悪戦苦闘されている方々の参考にしていただけそうな経験に基づく情報を発信してまいります。

出島人材の育成4:人材マネージメント制度の重要性3

 少し話が逸れるが、在宅勤務で生産性を高めるためにはどのような人事マネージメント制度が最適かというテーマに関連するウェビナーやオンライン講義を受講したり、関連した記事や文献を最近読み漁っている。 シンガポールは政府の統制がきつく、現在オフィスワーカーに対しては「完全在宅勤務を強く推奨。 オフィスでしたできない仕事がある場合、雇用主は従業員の20%以上を同時に出社させないよう配慮すること」というのがガイドラインになっている。 MOM(人材省)による査察が実施され、違反した場合は営業停止等の処分が課されるため、ガイドラインというより実質命令である。 在宅勤務でもいかに社員の生産性を短期的に維持し、中長期的には向上させるいいかというのが経営者にとって突如として湧いてきた重要課題である。 
 
 組織によって状況は千差万別であり、人材マネージメント制度に「これが正解」というものはない。 しばらくは試行錯誤を続けて自社にとってベストの制度へ改革していかなければならない。 セミナーにおいて「コロナ下では変革のコンセンサスが得やすい」という話を聞いたがたしかにその通りである。 失業率は急上昇しており、社員離職率が下がるのは間違いない。 が今まで徹底できていなかったことを押し進めたり、新しい試みを導入するいい機会である。 私なりにウェビナーや記事の情報を咀嚼、要約すると、弊社の場合以下のような制度変更(追加)が必要であるのが現時点での結論である。


1. 特に管理部門において、目標設定、フィードバック、レビューのサイクルを頻繁にする。 営業部門では四半期ごとのKPI管理を既にやっているので、大きな変更は必要ないと考える。 一方で、管理部門は年二回の人事考課(中間レビューと最終考課)のみで、これではリモート管理には不十分。 目標設定は年次で行うが、それを具体的アクションに落とし込み、月次でPDCAを廻す取り組みを導入する。


2. キャリアパスの明確化と、それを実現できるような社員教育の整備。 役割等級定義に基づき、社員ひとりひとりにキャリアパスと昇格基準を理解してもらう。 それを実現するために必要な教育制度を整備する。


3. 考課結果にもっとメリハリ(差)をつける。 特に、マネージャーが彼らのスタッフを考課する際の結果が平均に収斂しすぎている傾向があるので、ここを改善する必要がある。


上記2に関しての補足。 実は、お恥ずかしながら数年前に社員教育制度をどうしようかと考えた際、そもそも社員教育には目的があるべきで、目的を考えずに社員教育をどうするかを考えることは本末転倒、効果的な教育などできるわけないということに気づいたのが実態である。 まずは役割定義書を作成した上で、社員が上の役割に昇格するのをサポートするために必要な手段として社員教育を考えていくのが本来の順序であろう。

出島人材の育成4:人材マネージメント制度の重要性2

 まず一点目の「従業員のパフォーマンスを持続的に向上させる。」について。 具体的に考え出すと、色々と本質的な疑問が出てくる。 例えば、


  • そもそも、自社に存在するポジションに置いてパフォーマンスとは何を意味するのか?(特に、非営業部門)
  • 具体的にどういう目標を設定するのか? そして、目標に対する達成度をどうやって図るのか?
  • それらの目標達成のためにどういう手段(過程)が効果的なのか?

とにかく大事なのは、自社のケースで具体的に考えることである。 当然のことなのだが、中小企業の海外現地法人でこれをやっている(できている)会社は意外と少ない。 パフォーマンス向上はJob Descriptionの次に手を付けるべきテーマである。 


 
 会社(経営者)が社員に求めるパフォーマンスは、その会社の経営目標、職種やポジションという要素によって異なる。 これらを従業員に理解してもらえるよう、経営目標を具体的に細部に落とし込み、マトリクスで整理して文書化することが必要である。 日本で言うところの、役割等級定義書のようなものと考えていただければ良い。これが、成果をあげられるように組織を動かすために必要な人材マネージメント制度の第一歩である。
 
 これを英文(OR外国語)で作成するのは結構大変な作業ではあるが、社員のパフォーマンスを会社目標のベクトルに合わせながら継続的に向上させる、そしてそのために適切なトレーニングを計画、実行するためには不可欠である。(トレーニングも重要な項目であるので、また後で述べる。) もっと楽な方法は無いのかなどということは言わずに、諦めて地道に取り組んで頂きたい。

出島人材の育成4:人材マネージメント制度の重要性1

 今回からは、中小企業の海外拠点を持続的に成長させていくために必要な人材マネージメント制度はどのようなものかを考えてみたい。 組織を持続的に成長させていくためには、例えどんなに小さな規模であっても、従業員を雇用している限りにおいては必要最低限の人材マネージメント制度が絶対必要である。 更に、基本的にどういう考え方で、具体的にどのような人材マネージメント制度を導入するかはその組織のトップがビジョンや思いを込めて決めるべきである。 コンサルなどに丸投げしても、形は整っても効果的には機能しないものである。


 なぜ、規模が小さくとも制度が必要なのであろうか? よく「中小企業は社長がすべて」と言われるが、海外現地法人経営でも基本的には同じである。 しかし、自分の体は一つしかなく、誰にとっても一日は24時間しかない。 何から何まで自分で決めて部下を手足のように使うという方法では、最初は良くとも直に限界が来る。 過去私が新しい組織(海外法人)にトップマネージメントとして転職した場合、経営がうまく行っておらず、業績が振るわないというケースからスタートする。(そもそも、うまく行っていれば外から人を引っ張ってくる必要など無いのだからこれは当然なのである。) 当初はあらゆる組織機能(営業、経理、総務といった)がうまく動いておらず、いわば火消しや応急処置に奔走せざるを得ない。 この段階ではトップが全部自分で決め部下にやらせるという形しかとれない。(ただ、この段階でも、部下には何故作業をすぐにやることが必要なのかは説明しておくべきである。 これを続けて行くと、自ら学習するポテンシャルのある部下は学習してくれ、自分の作業が少しずつ楽になっていく。 また、ひとりひとりの部下の将来を期待できるかどうかある程度の判断ができる。)  


 大体こういう状況を3ヶ月~半年程度続けると、なんとか少しずつ会社がうまくまわっていくようになると同時に、社員の中で会社に必要な人材とそうでない人材の見分けが大体ついてくる。 ここから、本気で人材マネージメント制度を考えていく段階に入る。 そもそも、小さい組織でも何故人材マネージメント制度が必要なのだろうか? 私が考えるのは以下の2点である。


1) 従業員のパフォーマンスを持続的に向上させる。
2) 組織に残ってほしい従業員にはできるだけ長く働いてもらう。(逆に残ってほしくない従業員には去ってもらうため。)


次回でもう少し詳しくこの2点を説明したい。