中堅企業のためのグローバル化最適解を考察するブログ

中堅日本企業のグローバル展開をどう進めるのがベストか? 海外勤務22年のノマドビジネスパーソンが、同じ立場で悪戦苦闘されている方々の参考にしていただけそうな経験に基づく情報を発信してまいります。

出島人材の育成1:経営者とスペシャリスト(営業、製造、財務、人事等)の違い

 前々回の記事で述べた通り、今回からどうやったら社内で出島人材(≒現地法人のトップとして実績を上げることのできる経営者人材)を育成することができるかを考えていきたい。 


 海外拠点を立ち上げる際には、営業として日本国内で実績を上げていた優秀な人材を現地の責任者として送り込むケースが圧倒的に多いと思う。 販社の場合は特にそうで、実際に取引先を見ても営業出身者が圧倒的に多い。 とにかく売上をあげないと話しにならないので、これは最初のステップとしては当然のことである。 


 海外拠点がある程度軌道にのり、製造も始めるようになると、徐々に製造出身者や管理出身者が海外拠点の幹部として出向するケースが増えてくる。 また、自動車部品メーカーのように、顧客から現地生産の要望を断れない一方、当初数年間の売り先が確保できている場合はこの限りではなく、製造出身者が出向することが多くなる。 営業にせよ製造にせよ、要はサプライチェーンの中で、その時点で最も重要となる機能をバックグランドとする人材が現地責任者として赴任するケースが多いと思う。


 一方で、海外トップは経営に関して最終責任を負う立場にある。 したがって、「営業(あるいは管理、製造)のこと以外はわかりません」では経営者として継続的に成果を上げることはできないばかりか、思わぬ落とし穴にハマって大きなダメージを受けることもある。 自分のバックグラウンド(営業あるいは管理、製造)以外で経営に必要な要素を、社内外の専門家に相談しながら進めることのできる程度の幅広い最低限の知識は必要である。 すべてできる必要はない。 ただ、専門家と話をでき、それをもとに素速く最適な意思決定をできる程度の広く浅い(時には少し深い)知見を持っていることが、経営者としてきちんと機能するために不可欠である。 ところが、多くの企業ではそういう人材を計画的に育成していないため、社内に人材が見当たらないというのが実態であろう。 ある分野における社内エースを出したにもかかわらず、経営がうまくいってないというケースを多く見てきた。 そうなると、やはりつなぎ(言葉は悪いが)として外部から出島経営人材を調達する一方、そういう基礎力をもった人材を社内で育するしか方法はない。 こういう人材育成には最低数年はかかるから、一刻も早く今日からでも最優先で着手すべき課題である。

コラム2:仕事で成果を上げるために必要な英語コミュニケーション能力とは? そしてそれを身につける方法は?

 前回のコラムに引き続き、今回は以下の2点について具体的方法を考えてみたい。


2.英語のロジックを頭に叩き込む
3.難しいコミュニケーション前の準備と、復習で表現の引き出しを拡げる


 上記2に関して。 検定試験ではまずまずのレベル、文法的にも間違っていない、自分では正確に英語を話しているつもりなのに、相手がなかなか理解してくれない(例えば、「いったいお前は何を言いたいんだ?」というような意味合いのことを言われてしまう、あるいは相手がそういう表情をしているのがわかる)ということを、海外に出たてのころよく経験した。 これは、日本語のロジックで英語を話していることによって起こっているのが主な原因である。 こういうことが起こる理由と、その対策については以下の記事に詳しく述べているのでそれを参照していただきたい。(今から10年ほど前に書いていたブログです。)


「2つのロジック- 英語のロジックで構成する。」



 上記3に関して。 難しいコミュニケーションとはどんなものだろうか? 例えば、価格交渉やクレーム対応といった、顧客からの難しい要求に対する対応がまず考えられる。 それ以外にも、英語での採用面接や人事考課のための面接(特にネガティブな点に関するフィードバック)、解雇通告というケースもある。 相手の感情も絡む問題であり母国語でも難しい。 母国語でも難しいくらいだから、この種のコミュニケーションでこちらの考えていた成果を上げるためにはまず事前準備が不可欠である。 事前準備なしはまず成功しない。 今ではビジネス上の色々な状況に特化した英語教材もたくさん出ているので、そういう教材を参考に自分で想定問答を作って練習しておく。 ただ、徐々に教材のない世界に入っていく。 その場合は、本や映画に似たような場面が出てきたら、そこから使える表現をパクる。 海外の経営者の書いた名著を原書で読んで、そこから色々な表現をパクる。 
 こうして準備をしても最初のうちは、ある程度事前準備しても相手の予期せぬ反応や切り返しで言葉に詰まることはしょっちゅうであり、こちらの想定通りに議論がまとまることもまれである。 そういった経験をしたら必ず復習をして欲しい。 その時どういう対応をしておくべきだったのか、次回同じ場面を経験したらどういう説明をするかということを考え、想定問答に加えていく。 実に地道な根気のいる作業ではあるが、難しいコミュニケーションでも8割方はパターンがあり、この方法を3-5年程度続ければ殆どのパターンには対応出来るようになる。 私も色々と試みてみたが、残念ながら要領の良い方法は無いと思う。 コツなんかないので、諦めて正攻法で努力を継続してください。 それしかありません。

出島方式を実現する方法論4:出島を任せられる人材の要件を考えてみる3

 前回の記事の中で、外部人材のノウハウを内部人材が吸収する、こうして育った内部人材が次の人材育成にあたるという好循環が生じるのが理想的な姿であるという話をした。 この外部→内部へのスキル取り込みは大変重要な点であるので、自分の経験も含めて少し補足しておきたい。
 
 出島トップ人材としての最終目標は、どんな条件下でも任せられた現地法人において期待以上の業績をあげられることである。 そういう人材が成長する過程は直線的なものではなく、右上がりで上昇しつつも何かきっかけがあってトンと一段上がるという軌跡を繰り返していくように思う。(もちろん、この軌跡を描く大前提として、本人がゴールに合った正しい努力を続けていること。) そして、この「トンと一段上がる」きっかけの中でも最大のものは、自分の目標となるロールモデルと出会うことである。(それが上司であればなお理想的である。) 
 
 私の場合、30歳台後半で幸いにも理想的な上司と、理想的なタイミングで出会うことができ、それからその上司の下で10年に渡って経営はとして必要な多くのことを学べたのが大きい。 トップは色々と考えた上で、最後にはハラを決めて意思決定する。 そして決定した戦略を実行するためにリーダーシップを発揮して組織を動かす。 効率的に組織を動かすための制度や仕組みづくりにも取り組む、といったの多くの能力を吸収させていただいた。 今は逆に自分が人材育成にあたる立場となった。 部下や後輩を見ていても、やはり伸びる人は常日頃努力しているし、何かきっかけがあってとなってポンと伸びている。 彼らには、私のような外部人材の良いところは徹底的にベンチマークして(貪欲に盗み取ってもらって)、また悪いところは反面教師として大いに活用して欲しい。 (こういったきっかけの役割を果たすのも外部人材の重要な価値である。)
 
 組織としては、そういう外部から貪欲に学ぶという社風があることが、グローバル化を進めていく上での強みとなる。 幸い今私が所属している組織はこういう文化が根付いている。 社員の半分弱が中途採用者、現地法人3社のうち2社のトップが外部人材である。 道半ばではあるが、こういう組織はグローバル化を進められる大きなポテンシャルがあり、幸いにもそういう組織に所属する私のような外部人材もそれを実現する責任がある。 そもそも、中途採用社が活躍できないような組織は、ダイバーシティも実現できないのではないか。 
 
 今回は私の主観も混じったやや感覚的な話になってしまい恐縮であるが、最近こういう考えを裏付ける経営理論に出会ったので、別の機会にまた述べてみたい。 次回からは、社内でこういった人材を育成する方法論について考えていきたい。