中堅企業のためのグローバル化最適解を考察するブログ

中堅日本企業のグローバル展開をどう進めるのがベストか? 海外勤務22年のノマドビジネスパーソンが、同じ立場で悪戦苦闘されている方々の参考にしていただけそうな経験に基づく情報を発信してまいります。

コラム1:仕事で成果を上げるために必要な英語コミュニケーション能力とは? そしてそれを身につける方法は?

 巷にはTOEICや英検といった検定試験の結果による分類をはじめとして、諸説が氾濫していますが、殆どは提供者(検定する側)の理論に基づいたものばかりです。    ここでは実際に海外での経営者の立場から見た真実を述べます。 私の経験に基づいた独断と偏見も含まれている点はご容赦ください。 まず、レベルを以下の2つに分けることができます。 
レベル1:海外において自分の業務分野において、一人で動いて成果を上げられるレベル
レベル2:海外現地法人で、組織をマネージして(現地の人を動かして)成果をあげられるレベル
更に、レベル2はファンクショナルマネージャー(営業、製造、人事、財務部長という)のレベルと(レベル2-1とします)、トップマネージメント(CXO: CEO or Managing Director, CFO, COO)のレベル(レベル2-2とします)に分けることができます。
 
 成果を上げるためには当然のことならがら業務上の能力も大きく関係してきますので一概には言えませんが、自分の経験から言うとTOEIC900点を超えてようやく「レベル1」に到達するための基礎をクリアしたレベルと言えます。 私もこのレベルのときに顧客との折衝では四苦八苦することが多く、自分の未熟さを嘆いたものです。(ごくまれに、ものすごい行動力といい意味での押しの強さ、カリスマ性で、英語力の不足をカバーしてしまう方もおられますが、そういう例外は除きます。 それでは、「検定試験上級者」からレベル1をクリアするためにはどういう訓練が必要なのでしょうか? 以下の3つをおすすめします。
1.徹底的な多読
2.英語のロジックを頭に叩き込む
3.難しいコミュニケーション前の準備と、復習で表現の引き出しを拡げる


 まず1に関しまして。 英語コミュニケーション力を効率よく向上させるためには、当然のことながら読む、書く、聴く、話すをバランスよく学習ことが大切です。 その後、あるレベルに到達してから「英語頭」を更に強化するためには、多読を意識的かつ徹底的に行うのが一番という結論に達しました。 本当に寄り道しながら色々と試してみた結論です。(ここで言う「英語頭」とは、英語のインプットをそのまま脳で理解する、脳からそのまま英語でアウトプットするという意味です。) 多読の訓練を継続させるためには、何か他の付加価値、例えば楽しい読みものとか何か役に立つ読みものを選ぶのがコツです。 私はアーサーヘイリーの小説が好きだったので、主要作品はほとんど原書で読破しました。 もう一つは、Business Weekというニュース週刊誌です。 これは、仕事でも色々と役立つ情報が収集できる上、比較的ノンネイティブにとっても理解しやすいストレートな英語で書かれているのでありがたいです。 Timeも読んでみましたが、使われている語彙や表現が難しく(暗喩や皮肉、韻を踏むような表現が多用されている)、その当時の私の力では理解するのに時間がかかってしまいました。
 
 徹底的な多読を継続すると、色々な表現方法が頭に蓄積され、そのうち英文を書くときにすこーしずつ(本当に、嫌になるくらい少しずつですが)、その蓄積された表現が頭に浮かぶようになるのです。 しばしば、会社で部下の英文を添削した時、「なんでこんな表現が出てくるんですか?」と聞かれることもあるのですが、私としては「よくわからないけど、たぶん多読している効果だと思う。」と答えています。 本当によくはわからないのですが、それ以外は考えられないので。 2および3については、また何回か後のコラムで説明致します。

「出島方式」によるグローバル化とは?

 より正確に言うと、「出島方式で(いつのまにか)主従逆転」という方法です。 まさに読んで字の如くです。 今流に言うと「特区方式」と言ったほうが良いかもしれません。 具体的には、まずは海外の最も重要な一拠点に徹底的に磨き上げる、次にそこで蓄積したノウハウを多拠点に横展開していく。 最終的にはグローバル本社機能をその磨き上げた拠点に移転するという方法です。 私は中小企業が存続の危機に陥ることなくなんとかグローバル化を成功するためには、これしかないという結論に達しました。 ただ、その企業がある一定の条件を満たすことが必要ですが。 この条件(それほど難しいことではありません)については、またのちほど説明したいと思います。
 
 実はこの「出島」という言葉には、私がビジネスブレークスルー大学院経営学修士課程(コンサルタントの大前研一さんが学長の、E-ラーニングを活用したMBAコース)にて学んでいた際、そのなかのある講座ではじめてお目にかかりました。 「言い得て妙」で感心した記憶があります。 日本は江戸時代、鎖国をしていたため江戸から遠く離れた長崎の出島で海外との交易をしていたのは皆さんご存知のとおりです。 今でも多くの日本企業において、本社から傍流と見られている一部の海外事業部が海外事業の拡大に孤軍奮闘している。 この図式はまさに江戸時代の出島で海外交易をしていたときと本質的には変わっていないという、若干シニカルなコンテクストの中でこの言葉が使われていました。 ここ数年で企業の海外事業に対するプライオリティは急上昇し、海外部門は傍流ではなくなりつつあるものの、人材が決定的に不足して有効な手が打てていない為、残念ながら実質的な変化はほとんど現れていません。
 
 この講座を視聴した時、本社エリートから見れば傍流中の傍流(海外在住かつ転職組)のキャリアをずっと歩んできた私は、「あ、これだ!!」と思いましたね。 「出島」方式にこそチャンスがあるのではないか、石頭相手に(失礼!)本体(江戸幕府のような本社)変えるのに莫大なるエネルギーを使うより、自分の居る海外拠点を磨きあげる方にエネルギーを使い、そのうち本社が無視できないくらい存在価値を示す。 外から(黒船化して外圧で)本社の考え方を変えるほうがよほど現実的だと思いました。 そのほうが自分の人材価値も上がり一石二鳥です。 
 
 この出島方式を実施するにあたっても様々な阻害要因が立ちはだかってきますが、それでもまだ本社から変えていこうとするよりは遥かにスピード感を持って進められる、したがって成功する確率が高まる方法であると今は確信しています。 次回からはどうすれば出島方式を実現できるのかについて述べてまいります。

悪戦苦闘20年の結果辿り着いた、「これしかない」という方法論

 20年近く主に中小企業のグローバル化に悪戦苦闘しながら取り組んできた私の方法論は、以下の2点に集約されます。 


1.身の丈グローバル化
2.「出島」方式


 まず1に関しまして。 グローバル化のための人材もノウハウも「無い無い尽くし」の中堅企業が、大企業の事例をそのまま真似ても成功する可能性はほぼゼロです。 補給が出来ないのに、戦線を無謀に拡大すれば必ず破綻します。 身の丈にあった、自社のグローバル化の最適解を考えるべきです。 日本の大企業ですら、派手なトップ人事やM&Aでグローバル化を試み失敗した事例は枚挙にいとまがありません。(例えば、某ガラス大手や、某証券会社などです。) 「いわんや中小企業をや」です。  話は少しそれますが、日本企業によるクロスボーダーM&Aは、95%以上が失敗しているそうです。 こういうデータをみても、自分の経験からもM&Aに関しては、海外事業のオルガニックな成長をできる素地のない企業が海外M&Aをしてもまず成功できません。 これはまた別の機会に述べます。 


 とはいうものの、国内依存の状態をこのまま続けると、5年後には利益がタッチダウンしてしまうという状況の中堅企業は多く、もう海外に出ないと自社の存続事態が危ぶまれるという焦りや危機感を持っている経営者の方も多いと思います。 じゃあ、どうやって「身の丈」を考えればいいのか? 


 結論を言えば、まず「残された期間はどのくらいか?」を考える、そしてその期間を最大件利用したプロセスを考えるということです。 「残された期間は5年くらいかな?」ということは言い換えれば「ギリギリ、なんとか5年間の猶予はある」ということです。 かなり無理をすることは必要ですが、明らかに分不相応な無理をして屋台骨が揺らぐようなことは避けること。 以下のような点を社内でよく検討し、ギリギリ身の丈かつ最適解を探すことから始めましょう。
海外売上比率を何年後にどこまで持っていくのか?(会社存続のための最低ラインと、こうできればいいなという理想ライン)
その計画を実現するためにはどういう人材がどれだけ必要か? 
自社で育てられるか? 間に合わない場合は、何人くらい外部から調達すればいいのか?
資金はどのくらい必要か? どうやって調達するか?
(その他、まだたくさん考える事はありますよね?)


 上記のことを考えていくと、結局 2の「出島方式」に行き着きます。 これは次回説明します。