中堅企業のためのグローバル化最適解を考察するブログ

中堅日本企業のグローバル展開をどう進めるのがベストか? 海外勤務22年のノマドビジネスパーソンが、同じ立場で悪戦苦闘されている方々の参考にしていただけそうな経験に基づく情報を発信してまいります。

出島人材の育成3:必要なハードスキルとその習得方法1

 前回述べた3つのスキルのうちハードスキルに関して、どのようなスキルが必要かと、どうやって習得するのが最も効率が良いか、私の経験も含めて具体的に述べてみたい。 


 現地法人責任者の仕事というのは、一言でいえば売上・利益をできるだけ効率よく(コストを最適化して)、持続的に成長させることである。(「効率よく」「持続的」というのが非常に重要なポイント。) そのため必須となるスキルには以下とおりである。 


1.営業・マーケティング:
トップセールスは成長のための必要条件。 特に難易度の高い見込み顧客に関しては、トップがドアをこじ開け、具体的に進みだしたら部下にフォローを引き継ぐ流れが基本となる。(但しこれは十分条件ではない。 トップにいかに営業力があろうが、そればかりで組織マネージメントを疎かにしているといずれ限界がくる。 これはまたあとで説明する。)  


2.財務:
財務諸表から自社の強み、弱みを分析することが「効率よく」組織を成長させるためには不可欠。 「効率よく」というのは、売上・利益を最適化するためには、組織の状況によってどういう施策を優先するかが異なるからである。 経営の立て直しでは基本的には利益をV字回復させた後、売上の成長戦略に取り組むというのが基本型となるので、収益性や効率を把握する上で自社の財務分析は必須。 また、重要取引先(特に顧客)の収益性、安定性を評価する上でも財務スキルが要求される。


3.組織マネージメント:
組織の成果というのは、自分が影響を与えることのできるすべての人(社員&他のステークホルダー)の成果の総和である(Andy Grove著 High Output Managemen参照) 持続的に成果を上げるためには、持続的な社員の貢献が不可欠。 社員が最大限のポテンシャルを発揮して業績向上に貢献してくれる組織を作るために、トップが少なくとも半分の力を使うのが本来あるべき姿だと思う。(が、言うは易しで私もこの点はまだまだ力不足を感じている。)


4.ICT:
効率化を進めるための強い武器。 経営者にとって必要なのは、生産性を高めるために自社の仕事のどの部分にどういうICT技術を導入すれば良いかを判断できる能力である。 巷のITコンサルの言いなりだと、コストをかけたけど効果が出ないということになる。 そうならないための目利き力が必要。


 その他、状況によっては、生産、技術、法務等のスキルも必要になってくるが、実際にはとてもじゃないが一人でそこまで手が回らない。 よってこういった部分を任せられるスタッフを社内(本社も含む)に確保するか、外部に委託し、経営者としてモニターするのが現実的な方法である。


 次に、どうしたらこういった多種多様な経営スキルを効率よく習得できるか? 一番いいのはMBA(経営学修士)で、体系的に学ぶことであろう。 最近は仕事を続けながら学べる通信教育やパートタイムのカリキュラムも増えてきており、上記に挙げた科目はほとんどすべて必修科目に含まれている。 中小企業で自社カリキュラムを作るのは困難かつ効率も良くないので、外部プログラムの活用が現実的である。 


 次回からはご参考までに私自身の具体的な経験を少し述べてみたい。